BMW
「駆け抜ける喜び」を体現する、ドイツの自動車メーカー、それがBMWである。
1916年、グスタフ・オットーが航空機のエンジンメーカーBFW AG(Bayerische Flugzeug-Werke)を前身として誕生し、スポーティで性能の高い車として世界中から認知されている。
BMWを語る上で、エンジンに触れない訳にはいかない。普通自動車では衝突安全性能やコスト面から、近年では従来より小型なV型6気筒エンジンを採用している傾向にある。しかし、スペースやエンジンの軽量化を犠牲にして、自社製直列6気筒エンジンを搭載し続けている。これは振動特性やフィーリングに大変なこだわりを持つ同社ならではだ。レシプロエンジン(ピストンエンジン)は振動がなくパワーも出せるため、理想的なエンジンとされているが、そのために他社に比べて車のボンネットが長めだ。しかし、それが紛れも無い同車の個性として受け入れられ、世界で愛されている。
こだわりはエンジンだけではない。車体の前後重量配分を50:50に限りなく近くなるよう努力している。FF車やFR車など、理想の重量配分は諸説あるが、完璧なまでに「駆け抜ける喜び」を追求する姿勢は脱帽である。
デザインを見ても個性が光る。キドニーグリルと呼ばれる独特の形状をしたグリルのフロントマスクや、円にこだわるBMWならではの丸形4灯式ヘッドランプ、躍動感あふれるキャラクターラインは秀逸だ。
値崩れの激しさ
高いデザイン性が高く評価されているBMWだが、性能向上に重きをおいていたため、先進技術を取り入れることが多く、しばしば技術面に問題を抱えていた。特に電気系統の故障が多く、修理費用も高額であったことから、日本では故障のイメージが強いのか値崩れの幅が大きい。中古車市場で高値で売られているのをよく見るが、売却価格が低いと感じたオーナーは、少なくないのではないだろうか。しかし近年のBMWの部品群は、積極的に信頼性の高いものを採用しているため、性能・品質共に向上してきている。将来的に値崩れが少なくなることに期待したい。
「Freude am Fahren」
シルキーシックスのポテンシャルを最大限に発揮させ、根強いファンを獲得し続けるドイツの名車、BMW。モータースポーツで培った、快適に走るだけではない「本物」を、肌で味わうことができる車を販売し続ける同社は、走る喜びを追求するが故に、世界の常識と逆行し続けている。だが、洗練されたデザインの裏に隠れた野性を、剥き出しにする数少ない「走る楽しさ」を提供してくれる市販車ブランドだろう。今後、同社の中古車が高値で買い取られるようになることを期待してやまない。